いじめ防止対策推進法第22条(学校におけるいじめ防止等の対策のための組織)
いじめ防止対策推進法解説
【条文】
(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)
第二十二条 学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。
【解説】
□ 課題
いじめ問題に関するわが国の課題として、以下のような例が挙げられます。
○未然防止
・取り組みが、学校全体のものとなっていない
・取り組みが、単発的であり、継続性がない
○早期発見
・いじめ被害児童が、必ずいじめから救われると期待し確信できるような、安心・信頼の相談窓口が存在しなかった
・保護者からの相談に適切な対応がなされなかった
・担任以外の教職員がいじめを認識しているにも拘らず、対処がなされなかった
・第3者の立場の児童にとって、攻撃の矛先が自分に向く心配をすることなく、いじめに関する相談・通報ができる体制がなかった
○措置(事案対処)
・教職員が抱え込んでしまう
・教職員のいじめ問題対応能力が低い
・学校が、放置・隠蔽をする
・いじめ問題の周辺関係者への報告がなされない
・専門家による対応を受けられない
・保護者と学校でトラブルになる
・被害児童保護者と加害児童保護者でトラブルになる
これらの問題が、文科省の通達行政と、学校現場の構造上の問題であるととらえ、
法律の根拠に基づく、新たな組織を創り上げることを目的として、22条が定められています。
□ 学校いじめ対策組織の役割
国の基本方針において、次のような役割が明示されています。
【未然防止】
✧ いじめの未然防止のため,いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりを行う役割
【早期発見・事案対処】
✧ いじめの早期発見のため,いじめの相談・通報を受け付ける窓口としての役割
✧ いじめの早期発見・事案対処のため,いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などに係る情報の収集と記録,共有を行う役割
✧ いじめに係る情報(いじめが疑われる情報や児童生徒間の人間関係に関する悩みを含む。)があった時には緊急会議を開催するなど,情報の迅速な共有,及び関係児童生徒に対するアンケート調査,聴き取り調査等により事実関係の把握といじめであるか否かの判断を行う役割
✧ いじめの被害児童生徒に対する支援・加害児童生徒に対する指導の体制・対応方針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施する役割
【学校いじめ防止基本方針に基づく各種取組】
✧ 学校いじめ防止基本方針に基づく取組の実施や具体的な年間計画の作成・実行・検証・修正を行う役割
✧ 学校いじめ防止基本方針における年間計画に基づき,いじめの防止等に係る校内研修を企画し,計画的に実施する役割
✧ 学校いじめ防止基本方針が当該学校の実情に即して適切に機能しているかについての点検を行い,学校いじめ防止基本方針の見直しを行う役割(PDCA サイクルの実行を含む。)
□ 学校いじめ対策組織の構成員等
いままでのいじめ対策の委員会等では、学年主任や養護教諭等によって構成されることが多かったのですが、それでは対処ができてこなかった事実があります。
新しい組織では、各学年の担任の先生や、担任ではない各教科の先生も含めて、組織の構成員となる必要があります。そのような身近な先生が入っていない組織では、実効的な役割は果たせないとの考えがあります。
また、すべての教職員がいずれはこの組織を経験するようにローテーションされなければなりません。この組織に入って、活動することを通じて、いじめに対する知見を深め、対処能力を向上させることも期待されています。
もし仮に、合理的な理由なく、各担任や教科担任が1人も含まれていないような組織が設置されている場合、いじめ防止対策推進法に違反していますし、具体的事案によっては安全配慮義務違反として法的責任を問われることになります。
さらに、この組織には、外部の専門家を積極的に参画させることが望ましいとされています。
例として明示されているのは、心理・福祉の専門家です。
そのほか、衆議院議員の小西先生は次のように記述されています。
臨床心理士や社会福祉士のみならず、医師、児童福祉司、弁護士、司法書士、行政書士などの法律家、人権擁護委員、民生委員・児童委員、警察官OBなどなどの人材について、地域の連携の下に協動、連携体制を構築していくことが必要であると考えます