動機付け・モチベーション第1回(全3回)
受験マネジメント
動機付け・モチベーション
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受験勉強の業界に携わる中で、一番悩むのが勉強のモチベーションコントロールです。
自分自身の勉強ですら、難しいものです。
まして、他人の心を動かして勉強に向かわせるのは至難の業です。
私のノウハウ、また、思いを記すことで、子どもを勉強に向かわせることに日々格闘しているお母さん・お父さんの一助になれば幸いです。
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Deci & Ryanの自己決定理論
まず初めに、動機付けに関して有名な理論・分類を紹介します。
それが、Deci & Ryanの自己決定理論です。
下図をご覧ください。
まず大きく、内発的動機付けと外発的動機付けに分けられています。
内発的動機付けは、自分の内から湧き出る動機付けです。行動そのものが目的とよく説明されています。
外発的動機付けは、外からの働きかけによって引き起こされるものです。行動は手段であり、何かを得る目的が別にある場合です。
そして、もう1層下の分類が、次の6つです。
①知的好奇心充足
こちらは、例えば「勉強そのものが楽しい!面白い!」というものです。
②その他欲求充足
内発的動機付けの中で、知的好奇心以外の欲求はこちらに入ります。
例えば、「もっとできるようになりたい」「もっとがんばりたい」「自分で決めたことは守るぞ」といったものです。
③統合的調整
こちらは少しわかりにくいですが、「勉強こそ、今の私がやるべきことだ」「学生のうちは勉強するべきでしょう」といったイメージです。
④同一化調整
統合的調整より1段低いものとして位置づけられています。「将来役に立つから」「医者になるために必要だから」
⑤取り入れ的調整
「みんなやってるから」「宿題として出たから」といった例が挙げられます。“仕方なく”というイメージになります。
⑥外的な調整
こちらが、もっともレベルの低い動機付けとされています。「勉強しないと親に怒られるから」が代表例です。
このように整理してみることは大変有意義です。
いかでしょうか。⑥の外的な調整のみになっていませんか?
一般的には、この⑥外的な調整が多くなるほど、①知的好奇心充足や②その他欲求充足といった内発的動機付けが減少すると言われています。
できれば、⑥から少しでも上にあげて、積極的に自主的に楽しく勉強してもらいたいと思われていると思います。
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現実の子どもの複雑さ
さて、学者の仕事はここまでです。
私たちは、個別具体的な生身の子どもと向き合わねばなりません。
子どもの心はもっと複雑です。
最近前向きに勉強するようになったと思ったら、翌日にはいつまでもソファーでごろごろしている…
子どもの心は、コロコロ変わります。
また、ある一瞬の子どもの心を見ても、「怒られるから」という動機付けのみで動いているわけではありません。
①~⑥が、混在しているのが現実です。
それをできるだけ細かく観察して、少しづつ⑥や⑤を減らして④、③、②、①へと高めていく必要があります。
その必要があるのは、少しでも楽しく自主的に勉強してもらうためだけではありません。
実は、⑤や⑥ばかりの子どもと、①②③がメインの子どもでは、仮に成績が同じだとしても、脳に決定的な違いが生まれているのです。
それは、脳の回路(シナプスの結合)の違いです。
次回は、シナプスの話を書きます。
なにを言われても、「でも…」と言ってしまう大人がいると思います。一方で、「まずやってみようかな」と思う人も。
その違いは、この子どもの頃の勉強の動機付けが、⑥よりなのかそれとも①よりなのかによって大きく規定されていたのです。
そして最終回では、子どもが少しでも自主的に勉強するようになる工夫・仕掛けについて書きます。