欲望の資本主義に食われる子どもたち ~子どもにスマホを与えないでください~
受験マネジメント
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効果:子どもにスマホを与えることによる悪影響と、子どもを守るために戦うべき相手がわかる
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はじめに、私が先日読んだ本を紹介させてください。
『やってはいけない脳の習慣』川島隆太監修、横田晋務著
こちらは、東北大学と仙台市が連携して調査した7万人×7年間のデータをもとに、
スマホを使用することによる子どもの脳への悪影響について書かれた書籍です。
グラフ等を引用することはできませんが、問題認識を共有したいと思います。
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私が理解した結論を以下に書きます(分かりやすいように、本書より強調した表現をとっています)。
・スマホを長時間使用する子どもは、学力が低い
・スマホを使用しない(短時間のみ使用する)子どもは、学力が高い
こちらは、周知の事実だと思います。
そして、その理由は、スマホをたくさん使用する子どもは、勉強時間が短いからだとされてきました。
この理由がどうやら違うようなのです。
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問題は、次の事実です。
・スマホをたくさん使用するが、勉強もしっかりする子ども(Aさん)と、スマホを使用しないが、勉強もあまりしない子ども(Bさん)
では、後者(Bさん)の方が学力が高い傾向がみられた
ここから、書籍ではスマホを使用することによって、勉強の効果が消えたと仮説を立てています。
そしてさらに怖い事実があります。
・スマホをたくさん使用していた子どもが、スマホの使用を制限しても学力はあがらない
ひとたび、スマホにどっぷり浸かってしまうと、もう勉強が頭に残らないのです。
その理由として、MRI等を使用して、脳の発達を確認しています(ここから対象は、ゲーム・テレビも含まれます)。
そして分かったことは、スマホ、ゲーム、テレビをたくさん使う(する、見る)子どもは、言語や意欲に関する脳領域の発育に遅れがみられるということです。
その他にも、集中力の低下などが悪影響として顕著にみられています。
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対策は、
・スマホを与えない
・スマホを既に与えているなら、スマホを取り上げるのではなく、一緒にルールを作って使用時間を短縮する
とされています。
私が気になったのは、本書の「はじめに」の部分で、
この発表が何度もメディア等によって封殺されてきたということが記されていたことです。
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なぜ、この発表は封殺されるのか。
最大の問題は、子どもが賢くなると困る大人がいるということです。
・学割といって、早くからスマホを持たせて青田買いを狙う通信会社
・ゲームに夢中になって、たくさん課金してほしいゲーム制作会社
・アプリをダウンロードしてほしいネット産業関連会社
・閲覧数、いいねが欲しいユーチューバーやSNSの民
子どもを賢くする生産的コンテンツもあります。
しかしほとんどが、ただの消費的エンターテインメントです。
彼らにとって、子どもは自分たちのビジネスのターゲットです。
資本の極大化を狙う社会では、合理的行動です。
が、これには歯止めをかけねばなりません。
子どもは国の宝です。子どもをアホにして食い物にするビジネスには大義がありません。
※先日ある中学生が、(彼も昔You Tubeに夢中だった)
「ユーチューバーがしょうもないのはわかった。あれが面白いのは小学生まで」
と言っていたのを聞いて、少し安心しました。
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子どもを食い物にしていると言えば、学校もそうです。
・新しい食堂ができました。
・芝生のグラウンドがあります。
・校舎を立て替えました。
挙句の果てには、
・給食をホテルのシェフが作ります
そういった物質的・表層的なことで子どもを釣る学校が本当に増えてきました。どこも少子化で、児童数確保に必死なのでしょう。
その中で、生じた問題が、子どものお客様化です。
お客様は神様だとすれば、今や子どもは神様です。
これで、健全な子どもが育つはずがありません。
世の中自分の思い通りになると勘違いさせられてしまったかわいそうな子どもが増えています。
決して子どもを、お客様として接待してはならないのです。
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スマホ中毒の大人たち
話をスマホに戻します。
子どものスマホ使用に歯止めがかからない理由として、企業が子どもにスマホを持たせようとしていることに加えて。大人のスマホ中毒が考えられます。
電車の中で、その異様さが顕著に観察されます。
誰もが、熱心に画面だけを見ている。
もちろん、仕事・勉強にスマホを使用している人もいます。
しかし、大多数がアニメやゲーム、漫画、そしてLINEやその他SNSです。
子どもは朝早くから学校へ行き、夜遅くまで塾で勉強しています。
その帰りの電車で、周りの大人のほとんどが一心不乱にスマホを見ています。
その状況で、子どもに対して「子どもはスマホ禁止」と言えるでしょうか?
多少の息抜きは必要です。が、今の日本人のスマホ使用は度が過ぎます。
このブログの読者は、教養水準・知性水準の高い方が多いです。そこで言うのも違うのですが、書きます。
「電車でスマホばかり触るな。子どもの教育に悪い!」
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ここまで子どもの学力向上のために、スマホ使用を控えるよう書いてきました。
しかし、子どもの学力は向上させなければならないのでしょうか?
勉強はできないといけないのか?
もっといいますと(ストレートに書きます)、
アホになる自由もあるのではいか?
「おれはゲームしたいねん。アホでいいねん」と言う子どももいます。それを尊重する親もいます。
アホになって、将来就きたい仕事に就けず、悲しい思いをするという結果を背負うのは自分だから勝手にすればいいと、
自己責任だからいいのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし、断言しておきます。
アホになる自由はありません。
なぜかを話す前に、横山光輝氏の漫画『三国志』第60巻(最終巻)から1シーン紹介します。
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三国(魏呉蜀)の中の、蜀。
その祖が三国志の主人公、劉備玄徳です。
劉備玄徳の死後、蜀は状況が悪化し、劉備玄徳の子、劉禅は降伏を決めます。
それをその子劉シン(言+甚)(劉備玄徳の孫)が諫めます。
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「よし使者を出せ。身分を保証するならば降伏すると」
「それはなりませぬ。」
それは第5子、劉シンであった。
「おう劉シン。そちになにかよい知恵があるか」
「お父上、わが蜀の精鋭はまだ剣閣で健在にございます。ここで頑張れば剣閣の精鋭が駆けつけましょう。内外から攻めれば勝利はこちらにございます」
「戦う?馬鹿を申せ。わが国の城は次々と落とされているのじゃ。勝てるわけはない」
「もし運尽きて敗れましても、潔く戦って死ぬならば、地下の先帝(劉備玄徳)も評してくださりましょう」
「だまれ。そちのような小わっぱに天の時がわかるか」
「お父上。この国をみながどれほど苦労して造ったか、お考え下され」
先帝をはじめ
丞相(諸葛良孔明)
関羽
張飛
趙雲
馬超
黄忠
「その他諸々の将兵が死をかけて築いたものにございます。
それを…それをたった1日で…たった1日で捨てられますのか
それでは国のために死んでいった将兵があまりにもあわれすぎまする
なにとぞ最後の一兵まで…」
「だまれだまれ。もう重臣たちとの間で決めたことじゃ」
「お父上もう一度お考え直しを…」
「ええい、めざわりじゃ、退れ」
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その後、劉シンは家族のもとに行きます。
死んで地下の先帝にお目にかかりお詫びすると、奥さんに伝えます。
すると奥さんはこう答えます
「おお、それこそ我が夫。わらわもお供いたします」
最高の奥さんだと思う私は、平成にあっては危険思想でしょう。
それはともかく、ここでお伝えしたいのは、今の日本があるのは先輩方が、並々ならぬ努力を重ねてこられた結果だということです。
特に、私たち日本人の教育水準の高さは、江戸時代からずっと世界有数です。
これといった資源もないこの国が、今日の繁栄を誇ってるのは、すべて人の力です。日本人の知性の力です。
それは、昨日今日で得られるものではありません。何百年も前から、ずっと受け継いできたものです。
それがこの10年20年で崩れ去ろうとしています。
賢くならなくてもいいというのは、日本の先輩方(そして日本を導いてくれた海外の諸先生)に対してあまりにも失礼です。
個人の自由が強調され、自己利益の拡大が肯定される現在でも、日本の知性に対する真摯な姿勢は失ってはなりません。
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大変、勉強しづらい世の中です。
私の思いは、その世の中の土石流の中に打ち込む1本の杭たらんことです。
子どもたちが少しでも勉強に向かえますように。
(追記)
続きの内容でブログを書きました